嫉妬は銀の彼に


#name2#が緑色の御バカ様に微かな恋心を抱いて数日。土日の間会えなかった#name2#は月曜日、期待に胸を膨らませて学校までの道のりを歩いていた。


(青葉君がバカってことはわかったから、こうなったらわたしが勉強教えてあげるしかないよね。大丈夫、今日の数学はたっぷり予習してきたからちゃんと教えられる!)


土日の間に#name2#が頭をひねって考え出した紅葉との会話のきっかけだ。もっとも、席は前後なので小細工なしでも話そうと思えば話せるのだが、少しでも自覚してしまうと恥ずかしさが出てくるのだから仕方ない。教室の前で一息ついてから#name2#は中へ入った。


「おはよ、#name2#」

「おはよう」


いつも通り友人に挨拶をしてから自分の席に着く。まだ朝練が終わっていないのだろうか、紅葉も了平も来ていなかった。大丈夫、自分に言い聞かせてノートを開く。こんなにも気を使ってノートを作ったのは初めてだ。

5分ほどでボクシング部の二人が教室へ入ってきた。何故か、全力疾走で。


「…お、おはよう、青葉君…!」


鞄を机に放り、手をついて息を整えている紅葉に#name2#は思い切って声をかける。しかしその目は#name2#に向くことはなかった。


「僕の方が結局早く教室についたようだな!!」

「何を言う!?極限俺の方が先だったぞ!!」


ほぼ同時に入ってきたはずの二人は最近で見慣れた光景である、怒鳴り合う姿を朝っぱらから見せてくれた。このままだとこれまた見慣れた光景である殴り合いに発展してしまう。そう思った#name2#は二人の間に割って入った。紅葉からの返事がなかったのは今更気にしてはいけない。彼は熱くなると周りが見えなくなるタイプだとも理解していたからだ。


「ちょっと二人とも、落ち着いてよ!」

「む、#name1#か!…仕方あるまい、紅葉。勝負はまた今度だ」

「フン、怖気づいたのか了平。まあいい。勝負の行方は結局決まっているのだからな」


とりあえず、席に着いた二人にクラスメイト共々胸を撫で下ろす。#name2#も席に着いて一息つく。挨拶すらしてもらえなかったし、このままではせっかくの計画が台無しではないか。それだけは避けたい事態なので、気を取り直して話しかけてみる。


「青葉君」

「ん?#name1#か。おはよう」


鞄からものを取り出していた紅葉は顔をあげて#name2#を見る。ふっと緩められた口と目元はやはり整っている。クラスメイトとしては当然なのに、挨拶をしてもらえただけで#name2#の心は跳ね上がった。


「おはよう!ねえ、青葉君は数学の勉強してきた?」

「結局僕が勉強などするわけがないだろう!」


胸を張って言う紅葉に#name2#は、威張れることじゃない、と心の中でつっこんだが、全く予想通りであり狙い通りでもあったためによしとした。


「やっぱり…。ボクシングの練習が忙しいと思って。わたしのノートでよければ使って!今からでもやればきっと赤点は取らなくて済むでしょ?」

「本当か!結局感謝するぞ、#name1#!!」

「分からないところがあったら…「#name1#ッ!!」


なんでも聞いてね。そう続くはずだった#name2#の言葉を遮ったのは了平だ。急に大きい声で呼ばれて#name2#は肩を震わせる。


「な、何?笹川君…」

「俺にも極限教えてくれ!!」


今まで勉強など微塵も興味を示さなかった了平が#name2#にこんなことを言うのは初めてのことだ。受験生としてはどうなのかというところだが、#name2#はとても驚いた。


「どうしたの?いきなり勉強だなんて」

「俺が赤点で紅葉が合格など極限に許せん!」

「何をッ!?貴様やはり決着をつけておくべきだったな!!」


今にも掴みかかりそうな二人は#name2#が制止する暇もなくグローブを持って廊下へ行ってしまった。


(…せっかく途中までいい感じだったのに…!)


授業開始まで戻ってこなかった二人は勉強する時間などなく、結局二人とも赤点で補習を受けることになった。

その後も#name2#が紅葉に話しかける度突っかかってくる了平に紅葉も言い返し、二人の喧嘩が始まる、という流れが何度も続いた。#name2#にしてみれば、本当にいい迷惑なのだが、紅葉も少なからず楽しそうにしているために一概にやめてくれともいえない。(そもそもなんと言っていいかもわからない。)


「…いいなぁ、笹川君…」


昼休み、女の子で集まって食べているときに#name2#はポロッとこぼした。了平と紅葉。いつの間にか名前で呼び合う仲になっていて、ほとんどの時間一緒にいて(喧嘩している時間が一番長いのだが)、#name2#がいても紅葉は了平を優先する。


「いきなりどうしたのよ、#name2#」

「…えっ?い、いや何でもないやっ!」


ボーっと考え事をしていたが、まさか口に出ていたとは思わなかった#name2#。そして運悪く聞かれてしまったようだ。


「なによ、言ってみなさい!笹川君がどうしたって?」


ニヤニヤした顔で問い詰められて、#name2#は観念したように話しだす。相談相手がほしいと思っていたのも事実だったからだ。


「…笹川君はさ、青葉君に…かまってもらえるじゃない?だから…、いいなぁって…」

「………#name2#、アンタ…、青葉君のこと、好きなの?」


恥ずかしそうに言った#name2#に対し、直球に聞き返えされた言葉に答えることは出来なかった。顔を真っ赤にしてうつむいた姿は肯定しか表していなかったが。


「そっかそっか!いいじゃない、彼かっこいいし、ちょっと頭は弱いけど運動神経はいいし!」

「そうだけど…。でも…」

「#name2#きっと笹川君に嫉妬してんのよ、それ。何も気にすることないじゃない。笹川君は男の子、#name2#は女の子。男同士でつるむのは仕方ないでしょ?」


思わぬ励ましに#name2#は納得した。嫉妬という言葉はこの気持ちにぴったりだったし、気にすることはないというのも尤もだ。


「…うん、そうだね!元気出た、ありがと!」

「よしよし。応援するから、頑張るのよ?」

「うん!!」


一人で悩んでいたのがすっと解けるようだった。あと10分で昼休みの終わりだと知らせる予鈴が鳴ると#name2#はもう一度紅葉に話しかけてみようと意気込み、紅茶のパックを握りしめた。(次は大丈夫、ちゃんと話せる気がする)


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