11
「ふっ、だから言ったろ?お前らは罠に嵌ってるって」
余裕の笑みを浮かべる秋山に開いた口が塞がらない二人。
コツン、と女のヒールの音が響いた。
ハッとして振り返ると、秋山のソレに似た笑みを浮かべる女。
「負けね、アンタ達」
そう、秋山と15番は組んでいたのだ。
フクナガの性格を利用して、引き分けに持ち込むと見せかけて秋山一人を勝たせるという作戦だった。15番は三人分投票するときに、自分の分もYesに入れていたのだ。
「…い、いつからだ!?」
フクナガのその問いに対し、秋山は押し黙る。
「…話を持ちかけられたのは昨日の夜よ。アタシがアンタに騙されてるってね。そして情報提供する代わりに22番のネームプレートを預かったの。…賞金はコレと引き換え」
「そう、そして今朝になってアイツは俺の作戦に乗ったんだ」
ピン、とネームプレートを投げ渡す。
それをキャッチすると秋山はそれを見せつけるかのように言い放った。
「フクナガ、お前の負けだ」
状況を理解できていないフクナガに対し、追い打ちをかけたのはディーラーだった。
「…フクナガ様、あなたがタカダミチコ様から奪った1億円を、秋山様にご返却下さい」
「……ハァァァァァァ!??何でだよ!?これは俺の…」
「ゲーム以外でのマネーの奪い合いは無効です」
ディーラーはぴしゃりと反論を許さぬ強さで言った。
フクナガはわなわなと震えながら握りしめた小切手を床にたたきつけると、奇声を発し始めた。
秋山はディーラーの映る画面の前まで来ると、問いかけた。
「…目的は何だ。何の為にこんなゲームをやる?」
「真のライアーキングを決めたい、ただそれだけです。世の中には、多額のお金を掛けてでも、嘘吐きの天才を求めている方々がいらっしゃいます。…秋山様ならば、ご理解いただけるでしょう」
「やめて!深一さんは嘘吐きなんかじゃない!!」
それまで俯いていた#name2#が画面の顔に向かって叫ぶ。
「あぁ、もちろん#name1#様にも、私共は期待をしております。それでは、失礼いたします」
それだけ言い残すと、画面は一瞬ノイズがかかり、消えてしまった。
誰も言葉を発する者はいなかった。
その後、秋山は賞金の受け取りに行き、直と#name2#だけが残った。
「勝ててよかったね、#name2#ちゃん!」
「…そうですね、直さん。だけど…負けてしまった人もいますから、素直には喜べないですね…」
#name2#のその言葉にハッとする直。
「そ、そうだよっ!1億円なんて借金、どうしたら…」
慌てふためく直に、少し苦笑が漏れてしまう。
「…ゲームだから、仕方なかったのかもしれません。…じゃあ、私はこれで帰りますね」
「えっ?秋山さんを待たなくていいの?」
突然の#name2#の申し出に驚く直。
それもそのはずだ。何せ#name2#と秋山はゲームの間中ずっと一緒にいたのだから。
「…仕事があるので。深一さんにもそう伝えてください」
心なしか、#name2#の表情が暗い。
それはゲームの終了間際からだったことに直は気付いていた。
「…そっか。あ、#name2#ちゃん!アドレス、交換しよ?ゲームはこれでお終いだけど、私達、友達でしょう?」
友達。その言葉に#name2#は顔を上げる。
「…とも、だち…?」
#name2#は心が少し軽くなったような気がした。
「はい!これからもずっと、ともだちです!」
「じゃあ、よろしくね!友達なんだから、何かあったら相談も、乗るよ?だから一人で抱え込まないで」
「(ああ、直さんには全部お見通しなんだ。…敵わないなぁ…)」
自分がそんなにわかりやすい顔をしていたのかと、苦笑しながら、もちろん、と答えた。
しかし今秋山には会いたくなかったので、連絡する約束をして#name2#はその場を去った。
しばらくすると、秋山は屋敷から出てきた。
直が一人で待っているのを見ると、辺りを見渡しながら近づいてきた。
「おい、#name2#はどこだ?」
「#name2#ちゃんなら、仕事だからって帰りましたよ」
直は#name2#に言われた通りの理由を述べた。
本当は違うのではないかと気付いていたが、#name2#の為を思って黙っておいたのだ。
「…そうか、行くぞ」
帰りの車の中、秋山は全員に1億円ずつ配布することを直に告げた。
「…そんな、それって…」
「俺は棄権せずに3回戦へ進む」
迷わず放たれた言葉に直を少したじろぐが、それでも食い下がる。
「だ、ダメですよ!私達のために秋山さんが犠牲になるなんて…」
「犠牲とか、そんな高尚な気持ちじゃねぇんだよ。ただ、弱い人間を脅し、騙し合いをさせ、負けたヤツには多額の借金を背負わせる。そんなことをやって面白がってるライアーゲームの主催者を、突き止めたくなったんだ」
(それに、#name2#との約束がある)
「…はぁ、私、何やってんだろ」
#name2#は今、家の近くの公園にいた。
もともと仕事は、ゲームのために1週間の休みをもらっていたため無い。
「…勝手に嫉妬して、勝手に不機嫌になって、勝手に帰って…。こんなんだからまだガキなんだろうな…」
自分で言ってて泣きそうになってきた。
「…誰が誰に嫉妬したって?」
不意に後ろから声を掛けられ、ぎょっとして振り向く。
そこには、今一番会いたくない愛しの人がいた。
「深一さん…何でここに?」
本当は心臓が爆発しそうなくらいドキドキなのに、口から出てくるのは可愛くない言葉。
「ばーか、#name2#を探してたに決まってんだろ。仕事、休みなんじゃないのか?」
「…バレましたか。そーですよ」
「…で?」
急に切り返されて、#name2#の頭には疑問が浮かぶ。
「…何ですか?」
「誰が、誰に嫉妬してたんだ?」
一番聞かれたくない部分を聞かれてしまったようだ。
どう誤魔化そうかと思案していると、早く言え、と目で促される。
「…笑わないでくださいよ…?私が、15番さんに、嫉妬したんです…」
顔を真っ赤にして言う#name2#に、秋山なニヤリと笑った。
「#name2#だって、エトウのヤローとずっと一緒にいただろ。俺はやられたらやり返す質だからな」
「う…、ごめんなさい…」
しゅん、と小さくなる彼女に、これ以上は可哀そうだと思い、その頭をくしゃっと撫でた。
「…でも、深一さんが嫉妬してくれたの、嬉しいです!」
ニコッと、まだ少し赤い頬で自分を見上げながら言う#name2#に秋山は自分まで顔が熱くなるのを感じた。
顔を見られてはまずい、と咄嗟に#name2#を抱きしめる。
(神埼も十分天然だと思ったが、そういえば#name2#も意外と天然なんだった…)
「わ、深一さん?どうしたんですか?」
「当たり前だろ、エトウのヤロー殴り飛ばしてやろうかと思ったぜ」
少しの間そうしていると、秋山は思い出したように#name2#に何かを押し付けた。
「…何ですか、コレ?」
それは小さなメモで、#name2#が広げてみると、電話番号とアドレスが書いてあった。
「俺の。まだ教えてなかったから」
秋山は出所してから新しく携帯を買ったが、まだ#name2#には教えていなかったのだ。
「…ありがとうございます!」
嬉しそうに笑う#name2#を再び抱き寄せると、彼女の耳元で囁いた。
「俺には、お前しかいないんだ。俺から離れるなよ」
きっと彼にはバレていたけれど、泣きそうになったのは秘密だ。
(ああ、あなたはいつだって)(私の欲しい言葉をそのままくれる)
余裕の笑みを浮かべる秋山に開いた口が塞がらない二人。
コツン、と女のヒールの音が響いた。
ハッとして振り返ると、秋山のソレに似た笑みを浮かべる女。
「負けね、アンタ達」
そう、秋山と15番は組んでいたのだ。
フクナガの性格を利用して、引き分けに持ち込むと見せかけて秋山一人を勝たせるという作戦だった。15番は三人分投票するときに、自分の分もYesに入れていたのだ。
「…い、いつからだ!?」
フクナガのその問いに対し、秋山は押し黙る。
「…話を持ちかけられたのは昨日の夜よ。アタシがアンタに騙されてるってね。そして情報提供する代わりに22番のネームプレートを預かったの。…賞金はコレと引き換え」
「そう、そして今朝になってアイツは俺の作戦に乗ったんだ」
ピン、とネームプレートを投げ渡す。
それをキャッチすると秋山はそれを見せつけるかのように言い放った。
「フクナガ、お前の負けだ」
状況を理解できていないフクナガに対し、追い打ちをかけたのはディーラーだった。
「…フクナガ様、あなたがタカダミチコ様から奪った1億円を、秋山様にご返却下さい」
「……ハァァァァァァ!??何でだよ!?これは俺の…」
「ゲーム以外でのマネーの奪い合いは無効です」
ディーラーはぴしゃりと反論を許さぬ強さで言った。
フクナガはわなわなと震えながら握りしめた小切手を床にたたきつけると、奇声を発し始めた。
秋山はディーラーの映る画面の前まで来ると、問いかけた。
「…目的は何だ。何の為にこんなゲームをやる?」
「真のライアーキングを決めたい、ただそれだけです。世の中には、多額のお金を掛けてでも、嘘吐きの天才を求めている方々がいらっしゃいます。…秋山様ならば、ご理解いただけるでしょう」
「やめて!深一さんは嘘吐きなんかじゃない!!」
それまで俯いていた#name2#が画面の顔に向かって叫ぶ。
「あぁ、もちろん#name1#様にも、私共は期待をしております。それでは、失礼いたします」
それだけ言い残すと、画面は一瞬ノイズがかかり、消えてしまった。
誰も言葉を発する者はいなかった。
その後、秋山は賞金の受け取りに行き、直と#name2#だけが残った。
「勝ててよかったね、#name2#ちゃん!」
「…そうですね、直さん。だけど…負けてしまった人もいますから、素直には喜べないですね…」
#name2#のその言葉にハッとする直。
「そ、そうだよっ!1億円なんて借金、どうしたら…」
慌てふためく直に、少し苦笑が漏れてしまう。
「…ゲームだから、仕方なかったのかもしれません。…じゃあ、私はこれで帰りますね」
「えっ?秋山さんを待たなくていいの?」
突然の#name2#の申し出に驚く直。
それもそのはずだ。何せ#name2#と秋山はゲームの間中ずっと一緒にいたのだから。
「…仕事があるので。深一さんにもそう伝えてください」
心なしか、#name2#の表情が暗い。
それはゲームの終了間際からだったことに直は気付いていた。
「…そっか。あ、#name2#ちゃん!アドレス、交換しよ?ゲームはこれでお終いだけど、私達、友達でしょう?」
友達。その言葉に#name2#は顔を上げる。
「…とも、だち…?」
#name2#は心が少し軽くなったような気がした。
「はい!これからもずっと、ともだちです!」
「じゃあ、よろしくね!友達なんだから、何かあったら相談も、乗るよ?だから一人で抱え込まないで」
「(ああ、直さんには全部お見通しなんだ。…敵わないなぁ…)」
自分がそんなにわかりやすい顔をしていたのかと、苦笑しながら、もちろん、と答えた。
しかし今秋山には会いたくなかったので、連絡する約束をして#name2#はその場を去った。
しばらくすると、秋山は屋敷から出てきた。
直が一人で待っているのを見ると、辺りを見渡しながら近づいてきた。
「おい、#name2#はどこだ?」
「#name2#ちゃんなら、仕事だからって帰りましたよ」
直は#name2#に言われた通りの理由を述べた。
本当は違うのではないかと気付いていたが、#name2#の為を思って黙っておいたのだ。
「…そうか、行くぞ」
帰りの車の中、秋山は全員に1億円ずつ配布することを直に告げた。
「…そんな、それって…」
「俺は棄権せずに3回戦へ進む」
迷わず放たれた言葉に直を少したじろぐが、それでも食い下がる。
「だ、ダメですよ!私達のために秋山さんが犠牲になるなんて…」
「犠牲とか、そんな高尚な気持ちじゃねぇんだよ。ただ、弱い人間を脅し、騙し合いをさせ、負けたヤツには多額の借金を背負わせる。そんなことをやって面白がってるライアーゲームの主催者を、突き止めたくなったんだ」
(それに、#name2#との約束がある)
「…はぁ、私、何やってんだろ」
#name2#は今、家の近くの公園にいた。
もともと仕事は、ゲームのために1週間の休みをもらっていたため無い。
「…勝手に嫉妬して、勝手に不機嫌になって、勝手に帰って…。こんなんだからまだガキなんだろうな…」
自分で言ってて泣きそうになってきた。
「…誰が誰に嫉妬したって?」
不意に後ろから声を掛けられ、ぎょっとして振り向く。
そこには、今一番会いたくない愛しの人がいた。
「深一さん…何でここに?」
本当は心臓が爆発しそうなくらいドキドキなのに、口から出てくるのは可愛くない言葉。
「ばーか、#name2#を探してたに決まってんだろ。仕事、休みなんじゃないのか?」
「…バレましたか。そーですよ」
「…で?」
急に切り返されて、#name2#の頭には疑問が浮かぶ。
「…何ですか?」
「誰が、誰に嫉妬してたんだ?」
一番聞かれたくない部分を聞かれてしまったようだ。
どう誤魔化そうかと思案していると、早く言え、と目で促される。
「…笑わないでくださいよ…?私が、15番さんに、嫉妬したんです…」
顔を真っ赤にして言う#name2#に、秋山なニヤリと笑った。
「#name2#だって、エトウのヤローとずっと一緒にいただろ。俺はやられたらやり返す質だからな」
「う…、ごめんなさい…」
しゅん、と小さくなる彼女に、これ以上は可哀そうだと思い、その頭をくしゃっと撫でた。
「…でも、深一さんが嫉妬してくれたの、嬉しいです!」
ニコッと、まだ少し赤い頬で自分を見上げながら言う#name2#に秋山は自分まで顔が熱くなるのを感じた。
顔を見られてはまずい、と咄嗟に#name2#を抱きしめる。
(神埼も十分天然だと思ったが、そういえば#name2#も意外と天然なんだった…)
「わ、深一さん?どうしたんですか?」
「当たり前だろ、エトウのヤロー殴り飛ばしてやろうかと思ったぜ」
少しの間そうしていると、秋山は思い出したように#name2#に何かを押し付けた。
「…何ですか、コレ?」
それは小さなメモで、#name2#が広げてみると、電話番号とアドレスが書いてあった。
「俺の。まだ教えてなかったから」
秋山は出所してから新しく携帯を買ったが、まだ#name2#には教えていなかったのだ。
「…ありがとうございます!」
嬉しそうに笑う#name2#を再び抱き寄せると、彼女の耳元で囁いた。
「俺には、お前しかいないんだ。俺から離れるなよ」
きっと彼にはバレていたけれど、泣きそうになったのは秘密だ。
(ああ、あなたはいつだって)(私の欲しい言葉をそのままくれる)