03


「LIAR GAME 第2回戦の通知です」


ついに来ました、2回戦。

1回戦で無事に、笹原さんを打ち破り、(弱かったんですが)一億円を獲得した私。

そのまま私は2回戦の会場へと向かったのだった。



あなたと、再会することも知らずに。





****






「ここが2回戦の会場かー」


古びた洋館のような場所にたどり着いた私は、その近くで一人の女の子と会った。


「あの、もしかして、参加者の方ですか?」


正直、参加者はみんな年上だと思っていたから、同じくらい(もしかしたら私より下?)な人がいたことにびっくりした。


「はい、そうですよ。あなたもですか?」

「はい!私、神崎直っていいます!よろしくお願いしますね!」


久し振りに見た誰かの純粋な笑顔に、なんだか心が温まるような気がした。


「私は#name1##name2#です、こちらこそよろしくお願いしますね、直さん」

「#name2#さんって、もしかして私と同い年くらいじゃないですか!?私は今18歳なんです」


これまたびっくり、年齢は全く一緒だった。


「わあ、一緒です!私も今18歳なんですよ」

「じゃあ、#name2#ちゃんって呼んでもいい?」


もちろん、了承した。学校にも行かず、仕事ばかりしていたから、年齢の近い友人はほとんどいなかったのだ。自然と#name2#の心は弾んでいった。


「私、すごく不安だったの。1回戦も私一人じゃどうしようもなくて、ある人に助けてもらってやっと勝てて…。#name2#ちゃん、一緒にがんばろうね!」


どうしてこの子は他人を簡単に信じることができるんだろう。

私達はたった今出会ったばかりで、これから嘘つきのゲームに参加するっていうのに。

私が直さんを裏切ることだって、あるかもしれないのに。


(だけど、彼女なら、信じても大丈夫だ。きっと、絶対)


「ええ、こちらこそ、一緒に頑張りまよう」


私と直さんは、一緒に会場へと足を踏み入れた。


入ったところでそれぞれネームプレートを渡された。

この宝石は1億円の価値があるらしい、すごい!

私の番号は23番。直さんは19番。会場内には既に参加者がそろっていた。重苦しい空気に耐えられず、直さんに断って私はお手洗いに行くことにした。


(息がつまっちゃいますね。ところで、今回のゲームは一体なんでしょう)


適当に洋館の中を歩いて、さりげなく色々な部屋を覗いていた。


(これといった手がかりはなさそうです。そろそろ戻りましょうか)


#name2#が広間に戻ると、すぐにゲームの内容が発表された。

直の姿ももちろんあったが、とりあえず#name2#は入口近くで様子を見ることにした。


「第2回戦のゲームは、少数決です」


ディーラーがゲームを発表すると辺りがどよめく。それもそうだ、少数決でどのように戦うというのだろう。




―――――少数決―――――

Yes/Noで答えられるアンケートを一問出題し、多い方の意見に票を投じたプレイヤーは脱落。
残り人数が1人または2人になるまで投票を繰り返し、最後まで残ったプレイヤーが勝者となる。
なお、プレイヤーはアンケートに対して本当の事を答える必要は無い。




(そういうことですか、おもしろくなってきました)

そこでふと辺りを見渡すと、背の高い、一人の男が目に入った。逆光で顔がよく見えなかったが、それは#name2#のよく知る人物だった。


(し、深一さん…!!どうして、ここに…?)


参加者の何人かがディーラーに対し野次を飛ばしていたが、そんなことは#name2#にとってどうでもよかった。秋山から目が離せなくなっていた。

やがてルール説明が終わると、事務局員が食事を運んできた。最後の方、全く聞いていなかった#name2#だが、これは長い戦いになりそうだと思った。

広間は静かになり、参加者たちは各々様子を伺っているようだった。

そんな中、食事に手を伸ばすのは、二人。サングラスをかけた女性と、秋山だった。


(…どうしよう、すごく会いたい。すぐそばに、深一さんがいる。だけど、会ってどうする?私は待ってると言ったのに、来てくれなかった。それは私を忘れたからじゃないの?)


隠れるように柱の陰に立つ。ここは秋山からは死角のはずだ。

案の定、秋山は#name2#に気づくことなく、ソファに腰掛け、食事を始める。


しばらく#name2#が隠れていると、直が秋山に話しかけた。


(深一さんと、直さん、知り合いだったの?なんで?もう、訳がわからないよ)


すると、二人の会話が聞こえてきた。


「あの・・・秋山さん」

「食べないのか?」

「…食欲ないですから…」


なんだか、寂しく感じた。


3年前、いなくなった深一さん。出所日は過ぎている、それはわかっていた。けど、必ず会いに来てくれると信じていたのに、


(あなたは直さんと一緒にいたの?)


直が秋山の隣に腰掛ける。


「あたし…何でこんなことに…」

「何でこんなことに、か。…本当に、何でお前ここにいんだよ」

「それは…騙されて…」


ああそうか。

深一さんはきっと、直さんにお母さんを重ねてしまったんだ。

直さんは正直で騙されやすそうな性格をしていると思う。(出会ってすぐにそう思ったのだから相当だろう)

そんな直さんを放っておけなくて、助けたんだろうな。


「あの、秋山さんはどうして…?」

「俺はお前を止めに来ただけだ」


これ以上見ていると、二人の絆を見せつけられるような気がしたので#name2#は広間を後にした。


「(深一さんは、私のところに来ないで、直さんと一緒にいたんだ。何だか、馬鹿らしくなってきた。…もやもやするなー)」


だけど、一番嫌だったのは直さんに嫉妬する自分だった。


「(私、最低だ。深一さんが来てくれないのもわかるかも)」


#name2#は先ほど見て回ったときに見つけた、空き部屋らしきところに入った。


「ちょっと頭冷やそ。ゲーム始まったらそれどころじゃないもんね」





****





「あ、そうだ、秋山さん!さっき私友達が出来たんですよ」

「友達?お前、一体何考えてるんだ。ここにいるのは全員敵なんだぞ?」


全く、この女、神崎直には呆れさせられてばかりだ。敵だらけの中で、友達?…こいつ、また騙されるぞ。


「う…ごめんなさい。だけど、悪い人には見えなかったんですよ!#name2#ちゃんって言うんですけど…そういえばさっきから姿が見えないです。どこいっちゃったんだろう?」

「…お前…今、何て言った…?」

「え?だから、さっきから姿が見えないんですってば」

「違う、その前だ!その人物の名前は何だ!?」


まさか、と思った。

まさか、彼女までこのくだらないゲームに巻き込まれているなんて。


「#name1##name2#ちゃんっていうんですよ。私と同い年で…」

「姿が見えないと言ったな。探してくる。お前はとりあえず何か食っとけ」

「え、あ、秋山さん!?」


信じたくもなかったが、それはまぎれもなく事実のようだった。

3年前、泣きながら自分を見送ってくれた、あの少女が今、ここにいる。

秋山は走り出した。どこにいるかもわからないが、予感がしたのだ。





****





空き部屋でたそがれていると、扉をノックする音が聞こえた。


「…?はい、どうぞ」

「失礼しまーす」


入ってきたのは一人の男だった。ヒョウ柄のジャケットにリーゼントが特徴的だ。


「…えっと、どちら様ですか?」

「あ、俺、エトウコウイチ。なんかさっき様子がおかしかったからついて来ちゃった」


そう軽く言った男は、#name2#の近くまで来て隣に腰掛ける。


「そうだったんですか。でも私は全然大丈夫ですよ!ほら、あそこって息が詰まっちゃいません?」


先ほどの動揺を微塵も見せない笑顔で答える#name2#。しかし、エトウには見破られてしまった。


「うそ、泣きそうな顔してる。君は、#name2#ちゃん?」


ネームプレートを見てそう言うエトウに#name2#は驚いた表情を見せた。


「…私、こういった嘘吐くのは向いてないのかも、ですね…」


#name2#の目から涙が零れた。


「…深一さんに、会いたいです…。だけど…会いたくないです…」


両目からぽろぽろと落ちる涙を拭おうと、エトウは#name2#の顔に手を伸ばした。





****





どこだ、どこにいるんだ。


秋山は屋敷中の部屋を探しまわっていた。しかし、未だ#name2#は見つけられず、焦るばかりだった。


「…深一さ………です………た…な…」


わずかだったが、自分の求めていた声が聞こえた。

3年経っても忘れるはずのない、あの透き通った声。3年前よりも少しだけ、大人びた声。

バンッ


「#name2#!!!」




****





泣くつもりはなかったのに、エトウさんに嘘を見破られて、どうしようもなくなって、涙があふれてしまった。エトウさんが私に手を伸ばす。3年前、いなくなるときの深一さんの仕草を思い出して、悲しくなった。


「#name2#!!!」

「……え…?」


会いたかった人の、姿がそこにあった。


「#name2#に触るな」


秋山はエトウにそう言うと、二人の間に入り込み、#name2#をそっと抱きしめた。


「あーあ、主役の登場かよ。ま、邪魔ものは退散するよ。またね、#name2#ちゃん」


エトウはそれだけ言い残し、部屋を去って行った。

二人の間に沈黙が流れる。




「…#name2#…悪かった…」


ぽつり、秋山が話し出す。


「…何が、ですか?」

「…いろいろ、会いに行かなかったことも…」


やっぱり、覚えていて、会いに来てくれなかったんだ。


「今更謝るなんて、ずるいです。…私はずっと、待ってたんです」

「…悪い」

「どうして、来てくれなかったんですか…?」


その答えを聞くのは怖かったけど、やっぱりあなたの口から聞きたかった。


「…いろいろ忙しくて…、だけど、一番は、怖かったから、かな」

「…へ?…怖い?何がですか?」


その答えは#name2#の想像していたものとはかけ離れたもので、間抜けな声が出てしまった。涙も一気に止まった。


「お前が、#name2#が、俺を待ってないんじゃないかってことだ」

「…あなたが信じて待ってろって言ったんですよ。それとも、深一さんは私を信じていなかったんですか?」


なんだか不思議な気分だった。

怖かったのは、私だけじゃなかったんだ。

それと同時に、照れくさそうに言う深一さんが可愛らしく思えた。


「ふ、そうだったな。俺が信じられるのはお前だけだ。これからも、ずっと」

「深一さん…寂しかったです。だけど、待ってて良かった…。おかえりなさい」

「ああ、ただいま」


今はこの手を離さないで。







(泣き虫は相変わらずだな)(誰のせいだと思ってるんですか)


[ < > ]


[ back ]


- Blue Ribbon -