02


私は今、とある廃ビルに来ています。

何でかっていうというと、それは数日前にさかのぼるんだけど……




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謎の女ことエリーさんが言うには、一回戦は"マネー奪い合いゲーム"らしい。(そのまんまだ)

私の対戦相手は笹原圭吾さん。名前以外何もわからないからどうやって奪えばいいのかな。作戦を立てること数日、笹原さんのほうからコンタクトを取ってきた。




-―――#name1##name2#様―――-


第一回戦について
今回、マネーはゲームで取り分を決めるという方法を提案したい。
フェアなゲームを用意しよう。いい返事を期待している。

笹原圭吾
――――――――――――




(嘘吐きゲームでフェアだなんて)(でもせっかくだから勝負しましょうか)





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「ここで合ってるはず…」


人気のない建物で一人呟くと反響してなんだかすごく寂しく感じた。


(もう自分で時間指定したんだから早く来てよ!!)


笹原に了承の意を伝えると、日時と場所の書かれた手紙が送られてきたのだ。まだ姿の見えない相手に心の中で毒づく。重たい一億円(精神的にも)を持っていて疲れたため近くの椅子に座ろうとしたとき、自分以外の足音が響き、部屋が明るくなった。


「お前が#name1##name2#だな」


低いバリトンボイスで男が話し掛ける。


「こんにちは、笹原圭吾さん。今日はよろしくお願いしますね」


にこやかに笑ってみるが、相手―笹原は#name2#を見下すように立つ。


「座れ、“ゲーム”を始めるぞ」

「はーい」
(すごい上目線…)


笹原の威圧的な態度に押されつつも用意されたテーブルに向かい合わせに座る。


ゲームの内容は笹原が用意していた。





―-―JOKER's SERECT―-―
・プレーヤーのうち一人はジョーカーと他のカード一枚、もう一人はカード一枚を持つ。
・一枚しか持っていないプレーヤーは相手のカードを一枚引く。
・ジョーカーを引いた時点で負けとなる。
・第5回まで行い、一度勝つごとに2000万円を相手から受け取る。
――――――――――――







「簡単だろう?」

「ババ抜きのラストだけってことですか。いいでしょう、ただし、カードは毎回新品にして下さい。それでどうですか?」

「そのつもりだ」


簡単そうに見えてすごく奥の深いゲームだ。一度の決断で2000万円の移動。負けたら大分痛いな…。“フェアなゲーム”か。これは頑張らないと!!だけど彼、私の本業何だかわかってる?

コイントスで決めた順番は私が後攻でスタートだった。つまり、私が先にジョーカーを持つ方。


「よし、俺からだな。引くぞ」

「あ、ちょっと待って下さい。1ついいですか?」


笹原はゲームを中断されて少し不機嫌になったが了承した。


















「宣言します。

このゲーム、あなたは
・・・・・・・・・・・
ジョーカーしか引けない」








不敵に笑いながら自信たっぷりにそう言い放つと、笹原は動揺の色を見せた。


(相手の策は見破った、私も必勝法がある)


「…はは、戯言を。いいだろう、その自信、粉々に打ち砕いてやるよ」

「臨むところです。止めちゃってごめんなさい、引いていいですよ」


さすがにあの言葉が効いたのか戸惑いながら、笹原はもう一枚のカード、エースに手を伸ばした。


「な、何故だ!?」


笹原が引いたのはジョーカーだった。


「あ、残念でしたね。でももしかしたら偶然かもしれないですよ」

「クソッ!!いや、今のはただのまぐれだ!まだ一回目、これから全部勝てば8000万円は俺のもの…」

(そんなことには絶対になりませんけど)

「じゃあ私が引く番ですね。いいですか?」

「ああ」


笹原は二枚のカードを#name2#の前に出す。


(これ見よがしに片方強調するのはやめてほしいですね…)

「うーん、どっちにしようかな。ジョーカーは引きたくないから、じゃあ、ここは笹原さんを信じてこの飛び出て…」


そこまで言うと#name2#は笹原が隠そうとしているカードに手を伸ばした。


「(かかった!!こいつ、アホだ!!)」


笹原は心の中で勝利を確信した。


「…る方にしよ」

「(な、なんだと!?)」


笹原は#name2#が裏を読んで来ると思っていたのだ。#name2#が引いたのはエースだった。


「良かったー、このゲーム、すごく緊張しますね!」

「(何が緊張しますね、だ!まさか、こいつ最初から俺の考えを読んで…いや、そんなはずはない。どうせ偶然だ。次はないだろう)」


#name2#はエースを引いたので今度は笹原が引く番となる。


「さあ、どうぞ引いて下さい」

(あーあ、笹原さん、すごく静かになってしまいました。最初の威圧感はどこへ行ったんでしょうね)


笹原は何も言わずに考え込んで、やがてカードに手を伸ばした。





****





「…クソッ!!何故だ!?お前、一体何をしたんだ!」


試合は終了し結果は#name2#のストレート勝ちだった。


「笹原さんってとっても運が悪いんですね。だって5回連続でジョーカーなんてなかなか出来ないですよ」

「違う、お前が何かしたんだ!!だって俺は絶対にエースに手を伸ばしていたはずなんだからな」

「どうしてですか?どうして、エースに手を伸ばしたという確信があるんですか?」


#name2#はにっこりとしかし有無を言わせない笑顔で笹原を問い詰める。


「当たり前だろう!俺にしかわからないようにジョーカーにだけあらかじめ小さく印を付けておいたんだからな!!」


既に開き直っている笹原、そんな笹原に#name2#はゆっくりと話しだした。


「…やっぱりですか。まあ、とっくに気付いていたんですけどね。そういえば笹原さん、あなた、すごく視力が低いんじゃないですか?」

「な、何だいきなり」

「だって、ここ廃ビルですよね?昼間なのでゲームをするのには十分な明るさがあります。けどあなたは入ったときに電気を付けた。わざわざ復元しておいたんでしょう。そうでもしないと、あなたは小さな印を見ることが出来なかったんです」

「だがそれが分かったからといって何故俺がジョーカーを引くことになるんだ」


笹原は訳が分からず、いらいらした様子で続きを促す。


「そうですね、私の技を少し教えてあげます」

「…技…?」

「フォース、強制です」









――――フォース――――

二枚のカードを相手にわからないほどの早さで入れ替える技。
これをされると相手は自分の引きたいカードを引いたつもりで実は引かされていたことになる。

――――――――――――






「ていうことです」


笹原は最初に見せた余裕の欠片もなくなり、顔を真っ青にし、震えている。


「私はカジノディーラーです。その誇りに懸けて私の前でイカサマは絶対に許しませんよ」

「負けた…?俺が?…俺の……俺の、一億…。…俺の一億!そうだ、これはライアーゲームだ!約束なんか守る必要ないだろう!!」


笹原はそう言うと、カバンを持って出口に走りだそうとする。

しかし#name2#が素早く笹原の首筋に手刀を入れる。


「…俺の……一億……」


笹原は気を失った。


「…ごめんなさい、どうしても勝たないといけない理由があるんです…」


#name2#は笹原のカバンを持ち、立ち去った。


(きっと本当はいい人なのに)(人はお金に囚われるとどこまでも堕落する)


(待っていて、父さん。私が必ず助けるから)



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JORKER'S SERECT・フォースは、上甲宣之さんの小説「地獄のババぬき」のものです。


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