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桜の花が散り始め、葉混じりになった並木道。いつものように待ち合わせをして、手を繋いで。何度もこうして一緒に登校したのに今日からは明確に違うことがある。

わたしは征くんの”恋人”になった。偽りだけの関係じゃない、本当の彼女。

春休みのデート以来征くんに会えるのは久しぶりだったけど何気ない連絡を取り合うようになった。征くんが忙しいことに変わりはないのでもしかしたら他の人に比べると少ないのかもしれない。それでも#name2#には十分だった。


「ねぇ征くん、クラス替えどうなるかな」

「僕らは同じクラスだよ、絶対にね」

「え~、絶対かな?でもそうだといいね」


同じ学校にいられるのはあと一年。征くんの進路を聞いたことはないけれど、きっとわたしとは違う学校だと思う。にこりと笑う彼の目に鮮やかな赤い髪がかかった。時折邪魔そうに目を顰める前髪に手を伸ばして避けてあげる。


「前髪切ってあげよっか」

「#name2#がかい?」

「うん。邪魔そうだし」

「じゃあお願いしようかな。目にかかると鬱陶しくてね」


案外髪型へのこだわりがないらしい彼はいつもお任せしているという。美容師の好みかこだわりか、前髪は比較的長めに残されてしまいすぐに伸びてしまうのが煩わしいのだとか。そうだ、とカバンの外ポケットに刺さったゴールドのヘアピンを手に取る。


「今日のところはピンで留めとく?」

「…ちょっと貸して?」

「え、うん」


断られるだろうと思って冗談半分で差し出したピンは赤司に奪われる。前髪を留めた珍しい姿が見られると期待に満ちた目で赤司を見上げればその手は#name2#の方へ伸びてきた。

さらりと横髪を掬って耳にかけ、器用にピンで留める。まさか自分の髪をいじられると思っていなかった#name2#はぴたりと固まってしまった。


「うん、これでいいね」

「な、なんでわたしの髪なの?」

「たまにこうしていただろう?僕は好きだよ」


突然告げられた言葉があまりにも嬉しくて、恥ずかしくて。#name2#はその笑顔から目を逸らす。ありがと、と消え入りそうな声を絞り出して止めたままだった足を動かした。


「…よく覚えてたね、最近してなかったのに」

「僕は、ずっと#name2#を見ていたからね」


笑う赤司の顔に少しの照れ臭さを見つけて思わず笑みがこぼれる。何気ない会話が、やりとりがとても幸せで胸が満たされる。離されていた手をどちらからともなく繋ぎ直してその温もりを握りしめた。




****




学校に到着すれば昇降口の前に人だかりができている。それは毎年の光景で貼り出されたクラス表に一喜一憂する生徒たちで賑わっている。

表が見えるところまでたどり着いた2人は自分たちの名前を探す。赤司の名前はすぐに見つかった。


「…わたしは…、あっ!ねぇ、同じクラスだよ!」

「だから言ったろう?」

「本当だね、すごい。運命みたい!」


赤司は嬉しそうに見上げる#name2#の頭を撫でようと手を伸ばす。「運命なのだよ」突然ぴしゃりと投げられた聞き覚えのある声にその手は止まり、#name2#は目をパチリと瞬かせた。


「…真太郎」

「俺とお前が同じクラスになったのは運命、今年こそお前を負かしてみせるのだよ」


フン、と鼻を鳴らして見下ろし去っていった緑間の左手には見覚えのあるアザラシのマスコットが握られていた。


「…緑間くんも同じクラスなんだね」

「そうみたいだね」


行き場を失った手を下ろして赤司は#name2#の手を取った。行こうか、と声をかけて人混みから脱け出し肩を並べて教室を目指す。


「征くん、これから一年よろしくね」

「あぁ、よろしく。でも、」


一年だけじゃないだろう?

細めた目で不意に覗き込まれた#name2#は心臓が高鳴るのを感じた。一年だけじゃない、これから先もこの気持ちがある限りずっとずっと恋人なんだ。


「うん、今年も、その先も」


あなたの特別でいたい。


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