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赤司の誕生日当日、#name2#は何度目かわからないが手に持った紙袋の中身をちらりと見て確認した。そこにはプレゼントの手袋と水族館で買ったストラップがそれぞれ簡単に梱包されて入っている。買ったときに店員からラッピング袋の色を聞かれて反射的に赤と答えたが、どう見てもクリスマス仕様にされてしまったのが少しだけ気に入らなかった。

誕生日のプレゼントだともっと強調するべきだったか、あのときは時間がなくて余裕がなかったのがいけなかったなとぐるぐると思案していると学校に到着する目前でやたらデカくて目立つ紫色の頭を見つけた。朝練はないのだろうか、と思ったが恐らくあの様子はサボったのだろう。眠そうにあくびをしながらのそのそと歩く姿は昔見たアニメ映画のキャラクターを彷彿させた。


「紫原くん、おはよう」

「………?あ、#name1#さーん、おはよ~」


見下すようなその目が#name2#の手元に移り、普段の荷物とは少し浮いた紙袋に気付くと彼はあれ~と声をあげた。


「征くんのお誕生日、教えてくれてありがとね!今日練習観に行くんだけど紫原くんも出る?」

「今日は多分出るよ~」

「じゃあお礼のお菓子も持って行くね!」


お菓子の言葉に半分以上閉じられていた目が少し開いて輝いたように見えた。身体は大きいが子供のような反応にギャップを感じる。これは赤司が保護者のようになってしまうのもわかるような気がした。昇降口で靴を履き替えて階段を上る。今はいちご味の限定商品が多いだの、あれは食べたがまずかっただの延々とお菓子について語りながら長い足で一段ずつちょこちょこと上る姿も少しだけおかしかった。




****




放課後になるまでに友人たちからプレゼントはなんだと騒ぎ立てられた。#name2#が何も言わなくても赤司の誕生日を知っていた様子だったのでやはりプレゼントを用意したのは正解だった。これで今日がなんの日か知りません、なんて言えるはずがなかったので改めて紫原に感謝した。練習を観に行くといえば黄瀬ファンの友人たちも一緒に行くと言いだし、HRもそこそこに#name2#たちは体育館のギャラリーへと足を運んだ。

今日の赤司は彼女がいるとはいえプレゼントを渡す女子はいたようで休み時間のたびに彼の周りには荷物が増えていた。あれはまさか全部今日持って帰るのかと思いきや、いつのまにかなくなっていたのでどうにかしたのだろう。授業の合間に渡せなかったのだろうか、ギャラリーにいる女子にもプレゼントらしき袋を手にした女子生徒が何人かいたが#name2#の姿を見て帰ってしまった生徒もいた。

いつものように見やすい場所を陣取ると赤司の姿を探した。あのカラフルな頭の彼らはよく目立つ。赤い髪の後ろ姿はすぐに見つかった。もう冬場なのでジャージを着込み何かノートをチェックしている。体育館にも十分な冷暖房設備が設けられていてよかったと思う。そうでなければ何時間もここにいるなど、凍えてしまうだろう。

ふと振り返った赤司がこちらを見上げたので#name2#と目があった。練習中に目があうのは初めてで#name2#はびっくりしたが、赤司はニコリと笑ったので同じように笑い返した。口を「がんばって」と動かすとゆっくりと頷いたので伝わったのだろう。


「なになに~~!いいなぁ、#name2#ったら」

「私も黄瀬くんに笑いかけてもらいたい!」

「あんた彼氏できたじゃん」

「でも黄瀬くんがいいの~」


きゃっきゃと騒ぐ友人に囲まれて#name2#も照れたように笑って見せた。決して忘れてなどいない、#name2#が今日ここにいるのは他の赤司に用がある女子を遠ざけるためなのだ。赤司からコンタクトを取ってきたのもそれが目的だろう。友人たちが思い描くカップルとは程遠いことを実感して、プレゼントまで用意してしまったのが浮かれているように思えた。


「ねぇ、#name2#。アレ何?」

「え、なに?」


突然怯えたような声色で肩を叩かれ体育館の一角を指さされる。そこにはこちらをじっと見つめる紫原がいた。


「#name2#のこと見てるよね?私たち紫原くんとは特に知り合いでもないし…」

「……あ、そうだ。お菓子買ってくる約束してるんだった!」


紫原とお菓子。特に話したことがなくともその組み合わせはみんな知っていたので、そういうことかと胸をなでおろす。コンビニ行くけど、と声をかけてみんなで体育館を後にした。




****




体育館に戻ると少しだけギャラリーの人数が増えているように思えた。体育館では#name2#には考えられないほどのスピードで走りながらボールを自在に操る部員たちがいた。練習はまだ1時間ほど残っているだろうか。暖房のおかげで暖かい体育館で走り回る赤司をぼうっと眺めながら友人の黄瀬への控えめな声援を聞き流した。

練習が終わりモップ掛けをして片付けをしている頃、友人たちはこぞって帰ってしまった。差し入れ渡すんじゃないの?と聞いても代わりに渡しておいて~と言われてしまえば仕方がない。きっとあの試合のときのような理由なのだろうが、たまには自分たちで渡したって迷惑にはならないと思うが#name2#は了承した。


「じゃあね、みんな。また明日」

「じゃあね~」


体育館は戸締りされてしまうので一緒に出てきた#name2#はお菓子を渡すべくバスケ部の部室に向かった。部室棟に近づくのは初めてだった。#name2#が最後まで練習を見ているとわかれば赤司目当ての女子たちは諦めたのかプレゼントは教室か昇降口にでも置いて帰ったようだ。流石に効果はあったのだろう。

バスケ部と書かれた扉の近くで出てくるのを待つ。#name2#の買った分は紫原に、友人たちの分はとりあえず黄瀬に渡すつもりだ。みんなへという名目のため少し多いそれは黄瀬に配ってもらえばいい。

ガチャリと音を立てて扉が開く。顔を上げれば緑間が出てきたところだった。


「…何をしている」

「緑間くん。人を待ってるの」


怪訝な表情で見下し、テーピングの巻かれた指でメガネのブリッジをくい、とあげる。人を待っているという#name2#に赤司か、と納得した彼はそのまま#name2#の隣をすり抜けて行こうとしたので慌てて止めた。


「待って!征くんじゃなくて、紫原くんと黄瀬くん、呼んでくれない?」

「…?あぁ、わかったのだよ」


再び部室の扉をあけて顔だけ突っ込むと緑間は目的の二人を呼び出して今度こそ帰っていった。後ろ姿にお礼とお疲れ様、と声を投げたが特に返事はなかった。少ししてから扉が開き、緑間が呼んだ二人が出てきた。


「緑間っち~呼んだッスか?…っていないし」

「え~~~なにそれ~~」

「何なんスか…って#name1#サン!」

「二人とも、お疲れ様。これ、友達から差し入れ。みんなにって」


黄瀬にビニールを渡すと運動後とは思えないくらいキラキラした笑顔でサンキュッス~!と返ってきた。すかさず隣から抗議の声が聞こえる。


「なんで黄瀬ちんなの~俺のは?」

「紫原くんはこっち。あれはみんな用だから、一緒に渡したら全部食べちゃうでしょ」

「まぁいいけど~~」


袋の中を物色しながら目を輝かせる紫原はやはり子供じみていて面白かった。目当てのお菓子をゲットすればすぐに部室に戻っていった。入れ違いに出てきたのは赤司だ。出てくるなり#name2#の姿を見つけて待たせてしまったね、と眉を下げる赤司にまずはお疲れ様と声をかけた。




****




すっかり暗くなった道路を並んで歩く。あまり遅くまで活動する部活は少ないため周りに帝光の生徒はいなかった。


「紫原くんって面白いよね、なんか身体だけおっきな子供って感じ」

「敦はつい世話を焼きたくなってしまうね」

「やっぱり、征くんが甘やかしてるんだと思った」

「厳しくもしているつもりさ」


誕生日を教えて貰ったお礼を今日果たしたのだと言えば、そんなこともあったね、と言われる。紫原の保護者の役割を果たしている自覚は本人にもあったようだ。少し沈黙が流れた後#name2#は手にしていた紙袋を赤司に差し出した。


「あのさ、コレ」

「これは、僕にかい?気にしなくて良かったのに」

「彼氏の誕生日に手ぶらはひどいじゃない。誕生日おめでとう」

「ありがとう」


#name2#はなんとなく気恥ずかしくて赤司の顔を見ることはできなかったが、柔らかい声から察するにおそらくは笑っているのだろう。開けてもいいかな、と言われたのでどうぞと返す。二つあることに気が付いたのか、少し迷ったその手は上に乗っている小さい方から開けるようだ。


「ストラップ?」

「そっちはオマケ!この前水族館に行ったんだ。ほら、冬休み中一回もデートしないっていうのも不自然じゃない?だからデートで買ったことにしたらいいかなって」

「なるほど。それは一理あるね」


納得した様子でストラップを袋に戻す。#name2#もまだつけていないが、休み明けにはどこかにつけておこうと思っていたのでおそらくお揃いアイテムになるだろう。赤司は大きな方の包みに手をつけて中身を取り出していた。

ちらりと横目で表情を伺う。手袋を取り出した赤司の表情はさして変わらないように見えたが、気に入らなかったわけでもないのだろう。赤司は小さく#name2#の名前を呼んだ。


「なに?」

「手を繋いでもいいかな」

「…えっと、いい、けど別に誰も見てないよ?」

「そうだね」


言葉とは裏腹に赤司は左手で#name2#の右手をすくい上げた。優しく握られる手の温もりは前と一緒で、少し冷えた#name2#の手にじわりと熱が広がる。先ほどまでより半歩詰められた距離があまりにも近く感じた。

何か、言わなくては。これじゃあ動揺しているみたいだ。それでも#name2#は赤いマフラーと髪で顔を隠すしかできなかった。


「誕生日もいいものだね」


ふと赤司がつぶやく。そんなものだろうか。擬似的な恋人ごっこの相手でもいいのだろうか。家族や友人に祝ってもらう方がよっぽど気持ちだってこもっているだろうに。#name2#はこれから家では祝わないのかと聞こうとして、寸前で口を噤んだ。

赤司は家が厳しいのだと、前に誰かが言っていたのを思い出したからだ。母親を亡くし厳しい父親と暮らしているのだと。そんな家庭で暖かな誕生日のお祝いなど#name2#には想像がつかなかった。


「…じゃあ来年も」


俯いたままの顔を上げて赤司の顔を見据える。


「こんな関係のわたしで良かったらお祝いくらいさせてよ」


きっと赤司の誕生日を祝うのは来年が最後だろう。もしかしたら、その来年ですらこんな関係は終わってしまっているかもしれない。今あげた手袋やストラップはきっと処分されて、#name2#も揃いのストラップを引き出しの奥にしまいこんでしまっているかもしれない。


「キミが祝ってくれたらオレも嬉しいよ」


それでも、今目の前の赤司が笑っているならそれでいいと思った。


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