06
「空却くん、大好きだよ」
-拙僧も、お前のことが
「空却くん」
-#name2#、
「ごめんね?」
どんなに手を伸ばしても届かない。拙僧に背を向けて歩き出した#name2#の肩を男が抱き寄せた。
****
「……チッ」
なんて目覚めの悪い夢だ。夢の中でも#name2#は自分ではなくあの男を選んで、あの幸せそうな顔を自分には向けてくれなかった。時計を見れば午前3時、いつもなら眠くて仕方のない朝なのに今日ばかりは嫌になる程目が覚めてしまった。
あの野郎がどこの誰なのかわからないがどうにか探し出して一発殴らないと気が済まない。許せないと思いつつ何も知らない#name2#にその事を告げて傷つける勇気だけはどうしてもなかった。
****
男に会う日はすぐにやってきた。あろうことかまた#name2#ではない女を連れて繁華街を歩く姿を見つけたので空却は後ろから男の肩を掴んだ。
「…なんだ、また会ったな」
振り返り肩を掴んだのが空却だと気付いた男は連れに先に行くように告げると空却に向き合う。
「テメェ、どういうつもりだ」
「おいおい、そう怒るなって」
「#name2#を傷付けんなや、彼氏なんだろ?!」
胸倉を掴み引き寄せると周りが騒ついた。男は余裕そうな笑みのまま茶化すように口笛を吹いてみせる。
「おーおー怖いねぇ。善良な一般市民に坊主が何の真似だよ」
「一発殴らせろ、クソ野郎」
空却がぐっと拳を握り込んだところで男は掴まれた手を振りほどいた。
「お前に何の関係があるんだよ。お前#name2#のなんなんだ?」
「拙僧はアイツとずっと一緒にいた、アイツが傷つくのなんて許せるわけねぇだろ!」
「じゃあ知ってんのかよ」
男の笑みが消える。空却の作務衣の襟を掴み上げてひどく冷めた目で見下ろしてきた。
「#name2#が家のことで悩んで、泣いて、傷ついてんのを」
「…は?」
「あの子が耐えきれなくなって相談してきたのは何で俺だったんだよ」
「…何だよ、それ」
「ずっと一緒?傷つくのが許せない?笑わせんな。#name2#が泣いてる時に側にいてやらなかったくせに今更何言ってんだ。ま、いい子ちゃんな#name2#が何も言わないのをいいことに好き放題やってる俺も確かに悪い。でもそれは俺と#name2#の問題だ。お前にゃ関係ねーよ」
掴んでいた襟を捨てるようにぽい、と離せばもうこの話は終わりだと言うようにしっしっと追いやる。まだ話は終わってねぇ、と再び肩を掴んだところで携帯の着信音が響いた。鳴り続ける電話に出る素ぶりを見せずに男は空却を見据える。
「お姫様からお呼び出しだぜ。確か今日は飲み会って言ってたなぁ。迎えに行ってやれよ、坊主」
そんで聞いてみたらどうだよ、お前の知らねーこと。男の言葉を背に空却は大きく舌打ちをして走り出す。なぜアイツが自分を向かわせたのかわからない。アイツの言う通りにするのも癪だ。でもちゃんと知りたかった。自分の知らない#name2#のことを。
飲み屋が立ち並ぶ通りに来てみれば、そこにはフラフラと路地に入っていこうとする#name2#の姿が見えた。一人でそんなところで一体何をしてるんだ、足元は覚束なくて起きてるんだか寝てるんだかも危うい。
「#name2#!」
名前を呼ばれて一瞬動きが止まりゆっくりと振り返る。後ろにフラリと倒れそうになる#name2#の体を空却は腕で抱き寄せた。
「う~、ごめ、、、」
「いいから。ホラ、乗れよ」
随分酔っ払っているらしい#name2#は素直に空却の背に乗る。カバンが落ちないように、スカートがめくれないように注意しながら空却は#name2#をおんぶして歩き出した。
二人が街を離れ静かな夜を歩いている頃、ほとんど眠っていた#name2#は少し意識を戻したのか空却の首に回された腕にぎゅっと力を込めた。
「きてくれてよかったぁ、会いたかったんだ」
「…おー」
「うれしい。ありがと…ね…」
その言葉は誰に向けたものなんだ。今ここにいるのが拙僧だってちゃんとわかってるか。それを聞いたところで答えはないだろう。肩が濡れているような感覚に首を回して#name2#の顔を覗き込めば閉じられた瞳から涙が流れていた。
「ちゃんと泣けんじゃねーか」
その涙は恋人だけに見せるものかもしれない。迎えにきたのが彼氏だと勘違いしているかもしれない。アイツに言われたことが痛いほど突き刺さったのは事実だ。#name2#のことを全然知らないで一人置いていったのだから。
-拙僧も、お前のことが
「空却くん」
-#name2#、
「ごめんね?」
どんなに手を伸ばしても届かない。拙僧に背を向けて歩き出した#name2#の肩を男が抱き寄せた。
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「……チッ」
なんて目覚めの悪い夢だ。夢の中でも#name2#は自分ではなくあの男を選んで、あの幸せそうな顔を自分には向けてくれなかった。時計を見れば午前3時、いつもなら眠くて仕方のない朝なのに今日ばかりは嫌になる程目が覚めてしまった。
あの野郎がどこの誰なのかわからないがどうにか探し出して一発殴らないと気が済まない。許せないと思いつつ何も知らない#name2#にその事を告げて傷つける勇気だけはどうしてもなかった。
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男に会う日はすぐにやってきた。あろうことかまた#name2#ではない女を連れて繁華街を歩く姿を見つけたので空却は後ろから男の肩を掴んだ。
「…なんだ、また会ったな」
振り返り肩を掴んだのが空却だと気付いた男は連れに先に行くように告げると空却に向き合う。
「テメェ、どういうつもりだ」
「おいおい、そう怒るなって」
「#name2#を傷付けんなや、彼氏なんだろ?!」
胸倉を掴み引き寄せると周りが騒ついた。男は余裕そうな笑みのまま茶化すように口笛を吹いてみせる。
「おーおー怖いねぇ。善良な一般市民に坊主が何の真似だよ」
「一発殴らせろ、クソ野郎」
空却がぐっと拳を握り込んだところで男は掴まれた手を振りほどいた。
「お前に何の関係があるんだよ。お前#name2#のなんなんだ?」
「拙僧はアイツとずっと一緒にいた、アイツが傷つくのなんて許せるわけねぇだろ!」
「じゃあ知ってんのかよ」
男の笑みが消える。空却の作務衣の襟を掴み上げてひどく冷めた目で見下ろしてきた。
「#name2#が家のことで悩んで、泣いて、傷ついてんのを」
「…は?」
「あの子が耐えきれなくなって相談してきたのは何で俺だったんだよ」
「…何だよ、それ」
「ずっと一緒?傷つくのが許せない?笑わせんな。#name2#が泣いてる時に側にいてやらなかったくせに今更何言ってんだ。ま、いい子ちゃんな#name2#が何も言わないのをいいことに好き放題やってる俺も確かに悪い。でもそれは俺と#name2#の問題だ。お前にゃ関係ねーよ」
掴んでいた襟を捨てるようにぽい、と離せばもうこの話は終わりだと言うようにしっしっと追いやる。まだ話は終わってねぇ、と再び肩を掴んだところで携帯の着信音が響いた。鳴り続ける電話に出る素ぶりを見せずに男は空却を見据える。
「お姫様からお呼び出しだぜ。確か今日は飲み会って言ってたなぁ。迎えに行ってやれよ、坊主」
そんで聞いてみたらどうだよ、お前の知らねーこと。男の言葉を背に空却は大きく舌打ちをして走り出す。なぜアイツが自分を向かわせたのかわからない。アイツの言う通りにするのも癪だ。でもちゃんと知りたかった。自分の知らない#name2#のことを。
飲み屋が立ち並ぶ通りに来てみれば、そこにはフラフラと路地に入っていこうとする#name2#の姿が見えた。一人でそんなところで一体何をしてるんだ、足元は覚束なくて起きてるんだか寝てるんだかも危うい。
「#name2#!」
名前を呼ばれて一瞬動きが止まりゆっくりと振り返る。後ろにフラリと倒れそうになる#name2#の体を空却は腕で抱き寄せた。
「う~、ごめ、、、」
「いいから。ホラ、乗れよ」
随分酔っ払っているらしい#name2#は素直に空却の背に乗る。カバンが落ちないように、スカートがめくれないように注意しながら空却は#name2#をおんぶして歩き出した。
二人が街を離れ静かな夜を歩いている頃、ほとんど眠っていた#name2#は少し意識を戻したのか空却の首に回された腕にぎゅっと力を込めた。
「きてくれてよかったぁ、会いたかったんだ」
「…おー」
「うれしい。ありがと…ね…」
その言葉は誰に向けたものなんだ。今ここにいるのが拙僧だってちゃんとわかってるか。それを聞いたところで答えはないだろう。肩が濡れているような感覚に首を回して#name2#の顔を覗き込めば閉じられた瞳から涙が流れていた。
「ちゃんと泣けんじゃねーか」
その涙は恋人だけに見せるものかもしれない。迎えにきたのが彼氏だと勘違いしているかもしれない。アイツに言われたことが痛いほど突き刺さったのは事実だ。#name2#のことを全然知らないで一人置いていったのだから。