day1


ねぇ、アマンダ。君に聞いてほしい話がたくさんあるんだ。


「今日の修行でまた空却さんに褒めてもらえたんだ。アマンダも最近の自分を褒めてくれるかな…。…ねぇ、君と話せたらいいのにね。…なんてね!おやすみ、アマンダ。いい夢を」


親友のアマンダにキスを落として眠りにつく。今日もたくさん頑張ったからぐっすり眠れそうだ。



ーーーー ねぇ十四くん、わたしも十四くんとお話したいな。たくさん大切にしてくれてありがとうって伝えたいの。ねぇ、十四くん、




****




今日はアラームをかけないでゆっくり寝ていられる。お布団がぬくぬくして気持ちがいい。こうやって抱き心地のいいものを抱きしめて二度寝する幸せに浸っていたい………ん………?


「う、うわあぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


二度寝をしようとしていた十四が違和感のある柔らかい感触に目を開けると、目の前に見知らぬ人の顔を見て慌てて飛び起きた。十四はホラーやオカルトの類が酷く苦手であるが突然少女が現れて、しかもその少女を自分が抱きしめていたなんて一体どんな展開のホラー映画なのだ。

ベッドから転げ落ちるように距離を取れば明らかに布団は人1人入っていそうなくらい膨らんでいる。やっぱり気のせいじゃない。そっと覗き込んでみれば確かに女の子がすやすやと眠っていた。布団から覗く髪は桃色の混じったブロンド。歳は十四より一つ二つ下くらいだろうか。こんな女の子に見覚えはないし、ましてどうやってここに入ったのかもわからない。


「な、なんで、誰?!」

「んぅ…、十四くん?」

「君は誰なの?!どうして自分の隣に…?!……って、なんで!服は?!」


目を覚ました少女が体を起こした拍子に布団が捲れる。露わになった少女の上半身だけ見てしまったが服を纏っていなかった。まさか、自分は覚えていない間に女の子を連れ込んでしまったのか…?半泣き状態でオロオロとしながら目のやり場に困る少女を見ないように目線を泳がせていた。


「そんなに慌ててどうしたの?十四くん」

「なんで自分の名前…君は一体誰なの?」

「誰って…、わたしはアマンダだよ?」


へ?と間抜けな声を出すと同時に思わぬ答えにまた目線を彼女に向けそうになって視界に入った肌色に慌てて目をそらした。今少女は確かにアマンダと言った。そんなわけがないと思いながらも自分が昨晩抱いて寝たはずのアマンダの姿は見当たらない。


「…本当?本当にアマンダなの?」

「ほんとだよ。ずっと一緒にいた大親友なのに信じられないの?」

「でもどうして…」

「どうしてって、十四くんが言ったんだよ。わたしとお話したいって。最近の十四くんは変わったよね。本当に強くなった。たくさん頑張って偉いね。ホラ、おいで?」


両手を広げるアマンダを視界の隅に捉えて十四は少し感極まってしまった。だってそれは昨日、確かにアマンダに言って欲しいと思っていた言葉だったのだから。


「う、うん…じゃなくて!服!ちょっと待ってて!」


クローゼットを漁っていくつか服を取り出す。いくらタイトなデザインのものでも自分用では彼女には大きすぎるが仕方がない。極力アマンダを見ないようにしてそれを手渡し着用したことを確認すると十四は再びアマンダと名乗る少女をまじまじと見た。

少しだぼっとした服を身にまとった少女にやはり見覚えはない。だがあの髪の色と円らで黒目がちな瞳は確かにアマンダに似ている。そしてかけてくれた言葉が何よりの証拠だと思った。


「本当に君はアマンダなんだね…!嬉しいな、これからはお話できるんだね!」

「…うん!そうだよ。たくさんたくさんお話しようね、十四くん」


にこりと微笑む少女をいつもの癖で抱きしめようとして寸前で止まった。固まった十四を見てアマンダは首を傾げて両手を広げる。そうか、アマンダはいつものように抱きしめて欲しいんだ、と思う気持ちと女の子の姿のアマンダに触れていいのかという気持ちが葛藤する。

えーっと、ど、どうしよう、と焦る十四にアマンダは自分から抱きついた。大好きだよ、十四くん。そう言えば十四はおずおずとアマンダの背中に手を回して頷いた。




****




アマンダと十四はそのまま買い物に来ていた。せっかくアマンダはこんなにも可愛らしいのだから男物の服じゃもったいない!と意気込んだ十四に連れ出されたのだ。


「十四くんと一緒に歩けるなんて嬉しいな。お出かけするときもいつも一緒だけど、隣で歩くと全然違うね」

「えへへ、自分も嬉しいッス!あ、ねぇ、あそこのお店どうだろう?アマンダに似合うと思う!」


ゴシック調の洋服や小物がたくさん飾られた店をに入るなり店員が声をかけてくる。アマンダは十四の側にぴったりとくっついて隠れた。


「舞い降りし天使に狂い咲きの薔薇の衣を与え給え」

「…え?えーっと…」

「我の傍に天使がおるであろう」

「お連れ様のお洋服をお探しですね!」


察しのいい店員で助かった、と十四の伝わりにくい言葉を正しく理解してくれる店員に感謝する。店員はなぜか男物の服を纏うアマンダを見て全身コーディネートをいくつか薦めてくれた。


「アマンダ、気に入るのはある?」

「…これ…」


アマンダがじっと見つめていたのはグレーのワンピース。ウエストからふわりと広がったシルエットで金色の装飾でアクセントがつけられたそれは十四のジャケットに雰囲気がよく似ていた。それに気がついた十四はぱっと花が咲いたように笑ってワンピースを手に取る。


「試着お願いしてもいいっすか!」

「かしこまりました、どうぞ」


試着室から出たアマンダは少し照れ臭そうに十四の顔を見た。


「ど、どうかな」

「すごく似合ってるよ。やっぱりアマンダは可愛いね」

「えへへ、ありがと十四くん」


これでお揃いみたいだね、そうだね、と嬉しそうに笑いあってからワンピースを購入し店を出た。その後もいくつも回って十四は気がすむまでアマンダを着せ替えた。必要なものは全部買えて随分と荷物が増えてきたので二人は帰ることにした。すでに外は日が陰っていた。


「十四くん」

「なに?アマンダ」

「今日はありがとう。一緒にお出かけできて楽しかった!」

「…うん!」


初めてこんなに歩き回って疲れたアマンダは随分早い時間に布団にくるまっていた。十四も明日は修行で朝早い。そっとアマンダを起こさないように隣に横になる。


「まさか本当に会えるなんて、夢みたいだなぁ」


抱きしめてもいいだろうか。だってアマンダはアマンダで、今までだってそうしていたのだから。でもやっぱりベッドの中で女の子を抱きしめるなんて。


「……ん、十四くん…?」


そんな十四の葛藤など知らずにアマンダは十四に気がつき擦り寄ってくる。十四の腕を首の下に入れてぽす、と肩口に額をくっつけるとまたすやすやと眠りについた。その両手は十四の服をぎゅっと握っている。


「…~~~ッ!」


十四は顔が熱くなるのを感じてヤケになったようにアマンダの体をその腕に閉じ込めて目を閉じる。どんな姿でもやっぱりアマンダは大事な存在に変わりなくて、その愛おしさはどんどん増す一方だった。


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