お祭りのおはなし1


「いいか、祭の当日は真撰組総出で将軍の護衛につくことになる。将軍に掠り傷一つつこうものなら、俺達全員の首が飛ぶぜ。その辺心してかかれェ。キナくせェ野郎を見つけたら迷わずブッタ斬れ!!俺が責任を取る」


隊士達に指示を出すのは、鬼の副長こと、土方十四郎。会議中の今は物々しい雰囲気に包まれているわけでもなく、いつも通りの光景だった。


「マジですかィ、じゃァ侍見つけたら片っ端からたたっ斬りまさァ。…頼みますぜィ?」

「わーい、まさか本人の許可が出るなんて思わなかったね、総悟!」


真剣な顔つきで刀に手を掛ける青年、一番隊隊長沖田総悟と、嬉しそうに笑いながら沖田に声を掛ける少女、副長補佐#name1##name2#。


「おーい皆、さっき言ったことは無しの方向で」


屯所は今日も平和です。


「それから、こいつァまだ未確認の情報だが…、江戸にとんでもねェ野郎が来てるって情報があるんだ」

「とんでもねェヤツ?」

「一体誰なんですか?」


沖田と#name2#が尋ねると、土方の顔は一層真剣なものになった。


「以前料亭で会談をしていた幕夷十数人が皆殺しにされた事件があった。これァヤツの仕業よ、攘夷浪士の中でも最も過激で、危険な男…高杉晋助のな…」


ドクン…心臓が大きく跳ね上がる感覚に#name2#の顔は青ざめていく。いつかこんな日が来かもしれないとは思っていたけれど、それでもいざその名前を聞いてしまうと体がこわばるのを抑えきれなかった。


「(…うそ…、おにい、ちゃん…?)」


―お兄ちゃん、だいすき!―

―あァ、当りめェだろォが。#name2#、お前はずっと俺の傍にいんだよ―


「…い、…おい、#name2#!!」


昔を思い出して、優しかった兄の姿を思い浮かべる。多くの血を浴びて支えだった人を失った兄にはもう、あの頃の面影はないのかもしれない。ぼんやりとしていると目の前には土方さんのドアップがあった。


「…うわ!な、なんですか土方さん。瞳孔かっ開いちゃって…」

「…何ですかじゃねェンだよ!!とっくに会議は終わってんぞ。しかも瞳孔開いてるとかテメェ喧嘩売ってんのかァ?」


#name2#は言われてから辺りを見渡すと、もう既に半分以上の隊士が出て行ったあとだった。全然気がつかなかった。これではいけないなと畳においていた刀を手に取り立ち上がる。


「あー、マジですねー。スイマセーン」

「…#name2#、顔色悪いぞ。何かあったのか?体調悪いなら少し休んどけ」


隠しているつもりだったが、やはり流石副長といったところか、見事に見破られてしまった。優しく労わってくれる上司に少し、本当に少し感謝しながら#name2#は笑った。


「全然平気ですよ!むしろどうやって土方コノヤローを仕留めようかと考えていて…」

「コラァァァァァア!そんなこと考えてる暇があったら仕事しろ、仕事!!」

「…はぁい。今日一緒に見廻りでしたよね?。早く行きましょ!」

「あァ。…言っとくが遊びにいくんじゃないからな」

「…ぶー、わかってますよォ」




****




#name2#は頬を目一杯膨らませて不貞腐れていた。


「土方さーん、ちょっとだけ!!10分、いや5分でいいから、お願いしますよォ」

「だ・め・だ!!!遊びに来たんじゃねェって言っただろーが!!!」


そう、祭にいきたいと駄々をこねていたのだ。何といっても#name2#は兄に似て無粋の祭り好き。目の前で賑やかに楽しそうにしている人がいるのにずっとお預け状態なのだ。先ほどからなんども繰り返されるやりとりに土方は一度も首を縦に振ってはくれない。


「…#name2#、ちょっとこっち来なせェ」


総悟が小さい声で#name2#を呼ぶ。その耳に口を近づけて耳元で囁く。


「…便所、行きますぜィ」


その言葉の真意を理解した#name2#はニヤリと笑って頷いてみせた。


「…あ、あの…土方さん?」

「あァ?何だよ」


先ほどまで煩く纏わりついていた部下が急におとなしくなったので土方は目を丸くした。それに加え、少し上目遣いで土方を見上げている。


「…少し、お手洗いに行きたいんですけど…、ダメ、ですか…?」

「…便所だけだぞ。すぐ戻ってこい」


結局、折れてしまったのは彼の方だった。なんだかんだ土方は#name2#に甘い。タバコを[D:22169]み潰して了承すれば#name2#は周りに花が飛びそうなくらい輝かしい笑顔を見せて軽い足取りで屋台が立ち並ぶ方へと向かっていった。




****




先に行っていた沖田が合流して二人で屋台を巡る。


「あ、ねぇねぇわたあめ食べたい!でもかき氷もいいなァ。総悟はどうする?」

「もちろん折角サボって来たからには全部に決まってまさァ。あっちからいきやすぜィ」


隊服の二人組なので目立ってしまうが、気にする様子もなく堂々と綿菓子やらりんご飴やらを買い込む二人。#name2#は見知った顔を見つけて隣を歩く総悟に声を掛ける。


「あ、ねェ、あれ神楽ちゃんと新八くんじゃない?」

「全く、あいつらは暇人ですねィ」

「…ふふ、総悟、行きたいなら行って来なよ?」


にこにこと笑って図星を当てる#name2#に、行って来まさァ、と告げて沖田は射的を始めた。とりあえず両手がふさがったままで動き回るのも大変なので新八の元に行きいくつか買ったものを分けた。


「#name2#さん!お久しぶりです」

「新八くん、久しぶり!元気だった?」

「はい!あ、銀さんも元気ですよ。今頃きっとどこかで飲んでると思いますけど。#name2#さんは仕事ですか?」

「うん、一応ね。まぁ今は見ての通り、サボり中なんだけどね。はい、これも神楽ちゃんと食べて!」


土方さんにバレたら殺されちゃうよー、と笑う#name2#。少し二人で話していたが、射的組はマダオに向けて多数発砲していじめている。


「うーん、長くかかりそうねェ。…わたし、かき氷買ってくるね!総悟をお願いできないかな?」

「ええ、いいですよ。二人は見張ってますから、気をつけて行ってきて下さいね」


普段なかなかない心優しい言葉に癒されつつ#name2#は新八に見送られた。


「(かき氷の屋台、どこだっけ?)」




****




人々が舞を楽しんでいる中、黒服の男が二人。


「…トシ、総悟のヤツがウンコしに行くって言ったっきり全然戻らんのだが…」

「あンのヤロー、またサボってやがるな。てこたァ#name2#も一緒か…」

「トシ、他の誰を疑おうと構わんが、仲間を疑うことは俺が許さん。俺は総悟と#name2#ちゃんを信じる。…きっと、ウンコのキレがものすごく悪いんだ。#name2#ちゃんは女の子だからお手洗いが長いのは仕方ねェ。俺はそう信じたい」

「…#name2#はまだしも、総悟においてはそんな信じ方されるくらいなら、疑われた方がマシだと思うがな…」




****




(うーん、かき氷は見つかったけど、今度は総悟のところに帰れないよー…。どうしよう、いい加減戻らないと土方さんに本気で殺される!!!)


心の中ではそう思いながらも、しっかりとかき氷(イチゴ味)を食べながらのんびりとした足取りで歩く。そのとき、#name2#は懐かしい気配を二つ感じた。


(…銀ちゃんと、…お兄ちゃん…?)


総悟の元に行くのは諦めてそちらへ足を向ける。近づいてくる気配に心臓が高鳴る。立場が変わってしまったあなたは、わたしをどう思うんだろうね。


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