お見合いを阻止せよ
その日は偶然にも普段は使わない倉庫まで足を伸ばしていた。直近で大規模な遠征を行った影響で竜騎士団の備蓄品が心許なくなったことを知り、手配を依頼したところ一先ず近衛兵団用のものを使ってほしいと言われたからだ。季節は初春。薬草の類はこれから一斉に芽吹き、晩秋にかけて収穫と調合が行われる。
本音を言えばもう少し持っていってしまいたいところだったが、それでは近衛兵はどうする。彼らは城にいることがほとんどだから自分達よりもアイテムが余りがちとはいえ、こちらは拝借する身だ。だがこれでは春まで心許ないことに変わりはない。別の入手ルートを考えていると、薄く開いた扉の向こうから話し声が聞こえてきた。
「どうだ?#name1#の仕事ぶりは」
「ええ、隊長。#name1#はよく頑張っていますよ」
「こら、俺はもう隊長じゃないぞ、アル」
「すみません…。そうそう、この間も1人でモルボルを焼き払って…」
「モルボルだと?!そんな危険な…#name1#は無事だったのか」
「えぇ、だから焼き払ったんですって」
知った声に思わず足を止めた。そこにいたのは#name1#の父、前黒魔道士団隊長と副隊長のアルだ。彼は突然その立場を退き、今はミシディアとバロンを往復しながら研究の道を進んでいるらしい。
アルは#name1#が着任するより前から副隊長で、初めはアルがそのまま隊長になると思われていたのだが、本人がそれを拒み#name1#を推薦した。という話をたまたま会った#name2#氏に聞かされたことを思い出した。口数が多く社交的で面倒見が良い#name2#氏は自分の父とは対照的だった。
いくら2人と知り合いとはいえ、そして重要な話をしている風でもないとはいえ、立ち聞きはよくない。そう思って止めた足を再び動かそうとしたときだった。
「そうだ、今日はそんな話をしにきたんじゃない。随分と立派になったものだからな、そろそろ見合いなんかどうかと思ってるんだ」
「はぁ、お見合い…ですか?」
「あぁ。ほら、これが相手の方なんだが、既に話も通してあってな」
見合い…だと?聞き捨てならない言葉にもう構うことなく立ち聞きを続ける。周囲に誰もいないことが幸いだ。そんなことよりも見合いの相手はどこのどいつだ、開いた扉の隙間へ視線をやっても、#name2#氏はこちらに背を向けていてアルに見せている肝心の写真が見えやしない。
「俺としては悪くないと思うんだ。ミシディアの魔道士で、まだ若いが真面目で勤勉。それに魔法の腕もかなりのものだぞ」
「あぁ…なるほど。まぁ、確かに…」
アル、何を納得している。どう考えても#name1#に見合いなど早いに決まっている。
確かに、#name1#はもう18。家柄的に婚約者とかそういった相手がいてもおかしくはない。だから#name2#氏がその相手を見繕って来ても不自然なことではないが、それにしても急すぎる。第一本人に了承も取らずに相手に話を通すとは。いくら親とはいえ。悶々と考え込みながらこれ以上聴き続けるのも忍びなく2人の会話から耳を逸らしてその場を後にした。
元竜舎であり、現在は飛空艇の開発室として使われているところは竜騎士団の本部からほど近い。そちらの方から歩いてきたのは黒い鎧を身に纏ったセシルだった。瞳と同じ色の紅の引かれた唇がカインの名を呼ぶ。
「セシルか」
「カイン、浮かない顔をしてどうかした?」
「……おまえ、見合いの話は聞いたか…?」
「見合い…?」
「あぁ、今日#name2#氏が来てアルと話していた」
#name1#の、とはどうしてか口にしたくなくて濁した伝え方をしたがセシルは既に知っていたようでそのことか、と首を縦に振った。その平然とした態度がカインのモヤモヤを更に加速させる。セシルにとって大切な妹のような彼女のことなのにたったそれだけの反応か。
「まだ早いと思わんか?」
「…えっ…、そう…かな?」
「あいつはまだ18だ。何も今すぐ見合いなど…」
「あいつ…18…?……!うん、そうだね!僕もまだ早いと思うな」
やっぱり、自分の思った通りだ。まだ早いに決まっている。セシルだって同じ考えの奴に会えてこんなにも嬉しそうじゃないか。暗黒騎士の兜が似合わないくらいにニコニコと笑みを浮かべるセシルは、カインが阻止してあげないとね!と叫んでローザにも伝えてくると軽い足取りで去っていった。あの様子ならローザも味方なのだろう。当たり前だ。ローザも#name1#と同い年、絶対に反対するだろう。
夕刻前、アルを見かけたので捕まえて人気のない部屋へと連れ込んだ。#name2#氏は既に帰ったらしい。そういえばあいつの家にはハーブが年中生い茂っていたな、アイテム調達を協力してもらえないだろうか。と仕事のことが頭をよぎったのも束の間、目の前のアルの肩を強く掴んでカインは詰め寄った。
「アル、見合いの話だが…」
「えっ?!なんでカインが知っているんだ?」
「すまん、#name2#氏と話しているのを聞いてしまった」
納得して頷くアルに、おまえは賛成なのか?とすかさず質問をぶつける。相手と話が通っていようが、親がどれだけ乗り気だろうが、周囲がこれだけ反対すれば#name1#だって考えるはずだ。少なくともすぐに受けてしまうなんてことはないだろう。
「今日突然隊長……元隊長が来てそんなこと言われて、俺も困ってたんだよ」
「やはり急だったんだな」
「元隊長も良かれと思ってるだろうけど、でも心の準備だってあるしね」
「お前もそう思っていると聞いて安心した。俺は#name1#と話してくる」
「えっ?なんで#name1#……?って、行っちゃった…」
嵐のように現れた元上司に娘の、それも現上司にあたる#name1#の見合い話などを聞かされたせいだろう、アルの顔には疲れが浮かんでいた。自分も初めこそモヤモヤして焦りもあったが、こうも味方がいるのであれば何も迷うことはない。得意げに笑って大丈夫だと伝え、当人である#name1#の元へ向かった。
思い返せばこれまで#name1#の浮いた話をあまり聞いたことがない。部下が彼女の話をしていたり、恋人がいるのかと尋ねられたこともあったが、その後良い関係に発展したというのは聞かない。
仲が良い幼馴染でも所詮は男と女。そんな話をする機会があるわけもなく、セシルとだって(色々な意図があるせいで)互いに踏み込んだことは言わない。
だから急に何処の馬の骨とも知れない男が#name1#の相手になるなど、受け入れられるはずがないのだ。
#name1#はすぐに見つかった。手にした書類を受理するために城の中央部まで来ていたようだ。こちらを見るや、頬を緩めて笑っている。よくそんな暢気な顔をしていられる。思わず顰めた眉間は、竜の兜に覆われて#name1#が気付くことはない。
「カイン、久しぶりだね!」
顔を合わせるのは遠征に行くより前だったから10日と少し空いたところだ。そうだな、と相槌を打って改めて#name1#の顔を見る。随分と疲弊していたアルに比べて彼女は何もなかったかのように軽い足取りで駆け寄ってくる。
「遠征はどうだった?実はわたしたちも今度ね、」
「#name1#、話がある」
「え?何?」
首を傾げて疑問符を浮かべる#name1#に一度息を吸い込んで努めて冷静に口を開いた。見合いの話だが、と言いかけたところで心当たりがあったらしくこくりと頷く。知っていたのか、ならば話が早い。
「あれ?カインも聞いたの?そうなのよ、お父さんが急に言い出してね」
「あぁ。だが、まだ早いんじゃ…」
「そろそろしてみてもいいんじゃないかなってわたしも思っていたの」
「…なんだって?」
想像もしていなかった#name1#の返答に一瞬目眩がした。聞き間違い、とは思えないほど#name1#は笑顔で話していて頭を槌で殴られたような感覚に陥る。
「お相手の方もとても素敵な人だと思うし、まずは会ってみないとわからないでしょ?それにお城勤めって出会いがないわけじゃないはずだけど…魔道士って、この国ではあんまり人気もないし、ね」
「……お前がそうしたいなら、無理には止めないが……」
「…カイン?どうしたの?」
「だが結婚だぞ?もう少しよく考えてみてもいいんじゃないか?」
「わたしが考えるの?」
「当たり前だろう!何を他人事のように……」
良い加減我慢ならなかったので小さな肩を掴んで声を大にする。生涯を共にする相手を、それもミシディアに嫁ぐのならば黒魔道士団を抜けてまでも寄り添い続ける相手をそんな簡単に決めて良いわけがない。何もわかっていない#name1#にどこから説けばよいのか、相変わらず目をぱちくりと瞬かせる顔に不安を覚えたところで、後ろから知った気配と笑い声が聞こえてきた。
「ふふふっあはははは!」
「…あれ?セシルにローザ!」
「セシルったら、そんなに笑ったら悪いわよ!ふふふふ…」
「きみこそ!」
何が可笑しいのか、半ばお腹を抱えて笑い転げてしまいそうな2人は涙の浮かぶ目元を押さえて近付いてくる。お前たちも#name1#を説得してくれ、と思うが今の2人の様子の方がどう考えても変だ。
「なに?何がそんなに面白いの?」
「カインさ!お見合いは無事に阻止できた?」
槍玉に上げられてぴくりと眉が動いた。今からそうしようというのに、とんだ邪魔をしてくれたものだ。ひとまず一度冷静になって話を改めようと#name1#の肩から手を離した。
「今からそれを…」
「阻止って…、カイン、お見合いを止めたかったの…?」
「あぁ、だいたい俺たちに相談もなく、」
「そんなにアルに結婚してほしくなかった?」
先ほどの笑顔と一転して不安を浮かべる#name1#。また後ろから笑いを堪えきれなかったセシルが吹き出した音が聞こえたが、もはやそれはどうでもいい。今、なんと言ったか。アルの名が出てきたと思うが、なぜなのか。混乱する脳内ではいっそアルと#name1#が結婚してしまいそうだ。
「……#name1#、見合いをするのは誰だ?」
「アルとミシディアの白魔道士の子よ」
「……」
全てが繋がった。#name2#氏は、元部下であるアルをミシディアで紹介していたというわけか。確かに2人は#name1#の、とは一言も言わなかったが。
「…セシル、お前は知っていたな?」
「ごめんごめん、お前があまりにも必死だったからつい…で、でも僕も#name1#のお見合いとは言ってないよ!」
「いいや、言ったも同然だ!」
****
「こんにちはー竜騎士団のみなさん!」
数日後、#name1#はアルを連れて大荷物を抱えてやってきた。2人掛かりでなんとか持てる山のようなアイテムはほとんど#name1#が手配してくれたもの。受け取った団員がその重さに目を丸くしていた。
「頼まれてたアイテム持ってきたよ。これで足りそう?」
「あぁ、十分だ。ありがとう、助かった」
「これくらいお安い御用よ」
これから黒魔道士団は遠征に出るらしく渡すだけ渡して立ち去る#name1#たちに気をつけろよ、と声をかける。先を行く#name1#の後ろでアルが振り返り遠慮がちにこちらへ近付いて来た。
「そうだ、カイン。…お見合いのことなんだけどさ、やっぱり俺は断ったよ」
「…そうか」
「カインには伝えてあげてって#name1#に言われたんだけど…これでよかった?」
「#name1#…!あぁ、いや、すまん。お前は悪くない。残念だったな」
本音を言えばもう少し持っていってしまいたいところだったが、それでは近衛兵はどうする。彼らは城にいることがほとんどだから自分達よりもアイテムが余りがちとはいえ、こちらは拝借する身だ。だがこれでは春まで心許ないことに変わりはない。別の入手ルートを考えていると、薄く開いた扉の向こうから話し声が聞こえてきた。
「どうだ?#name1#の仕事ぶりは」
「ええ、隊長。#name1#はよく頑張っていますよ」
「こら、俺はもう隊長じゃないぞ、アル」
「すみません…。そうそう、この間も1人でモルボルを焼き払って…」
「モルボルだと?!そんな危険な…#name1#は無事だったのか」
「えぇ、だから焼き払ったんですって」
知った声に思わず足を止めた。そこにいたのは#name1#の父、前黒魔道士団隊長と副隊長のアルだ。彼は突然その立場を退き、今はミシディアとバロンを往復しながら研究の道を進んでいるらしい。
アルは#name1#が着任するより前から副隊長で、初めはアルがそのまま隊長になると思われていたのだが、本人がそれを拒み#name1#を推薦した。という話をたまたま会った#name2#氏に聞かされたことを思い出した。口数が多く社交的で面倒見が良い#name2#氏は自分の父とは対照的だった。
いくら2人と知り合いとはいえ、そして重要な話をしている風でもないとはいえ、立ち聞きはよくない。そう思って止めた足を再び動かそうとしたときだった。
「そうだ、今日はそんな話をしにきたんじゃない。随分と立派になったものだからな、そろそろ見合いなんかどうかと思ってるんだ」
「はぁ、お見合い…ですか?」
「あぁ。ほら、これが相手の方なんだが、既に話も通してあってな」
見合い…だと?聞き捨てならない言葉にもう構うことなく立ち聞きを続ける。周囲に誰もいないことが幸いだ。そんなことよりも見合いの相手はどこのどいつだ、開いた扉の隙間へ視線をやっても、#name2#氏はこちらに背を向けていてアルに見せている肝心の写真が見えやしない。
「俺としては悪くないと思うんだ。ミシディアの魔道士で、まだ若いが真面目で勤勉。それに魔法の腕もかなりのものだぞ」
「あぁ…なるほど。まぁ、確かに…」
アル、何を納得している。どう考えても#name1#に見合いなど早いに決まっている。
確かに、#name1#はもう18。家柄的に婚約者とかそういった相手がいてもおかしくはない。だから#name2#氏がその相手を見繕って来ても不自然なことではないが、それにしても急すぎる。第一本人に了承も取らずに相手に話を通すとは。いくら親とはいえ。悶々と考え込みながらこれ以上聴き続けるのも忍びなく2人の会話から耳を逸らしてその場を後にした。
元竜舎であり、現在は飛空艇の開発室として使われているところは竜騎士団の本部からほど近い。そちらの方から歩いてきたのは黒い鎧を身に纏ったセシルだった。瞳と同じ色の紅の引かれた唇がカインの名を呼ぶ。
「セシルか」
「カイン、浮かない顔をしてどうかした?」
「……おまえ、見合いの話は聞いたか…?」
「見合い…?」
「あぁ、今日#name2#氏が来てアルと話していた」
#name1#の、とはどうしてか口にしたくなくて濁した伝え方をしたがセシルは既に知っていたようでそのことか、と首を縦に振った。その平然とした態度がカインのモヤモヤを更に加速させる。セシルにとって大切な妹のような彼女のことなのにたったそれだけの反応か。
「まだ早いと思わんか?」
「…えっ…、そう…かな?」
「あいつはまだ18だ。何も今すぐ見合いなど…」
「あいつ…18…?……!うん、そうだね!僕もまだ早いと思うな」
やっぱり、自分の思った通りだ。まだ早いに決まっている。セシルだって同じ考えの奴に会えてこんなにも嬉しそうじゃないか。暗黒騎士の兜が似合わないくらいにニコニコと笑みを浮かべるセシルは、カインが阻止してあげないとね!と叫んでローザにも伝えてくると軽い足取りで去っていった。あの様子ならローザも味方なのだろう。当たり前だ。ローザも#name1#と同い年、絶対に反対するだろう。
夕刻前、アルを見かけたので捕まえて人気のない部屋へと連れ込んだ。#name2#氏は既に帰ったらしい。そういえばあいつの家にはハーブが年中生い茂っていたな、アイテム調達を協力してもらえないだろうか。と仕事のことが頭をよぎったのも束の間、目の前のアルの肩を強く掴んでカインは詰め寄った。
「アル、見合いの話だが…」
「えっ?!なんでカインが知っているんだ?」
「すまん、#name2#氏と話しているのを聞いてしまった」
納得して頷くアルに、おまえは賛成なのか?とすかさず質問をぶつける。相手と話が通っていようが、親がどれだけ乗り気だろうが、周囲がこれだけ反対すれば#name1#だって考えるはずだ。少なくともすぐに受けてしまうなんてことはないだろう。
「今日突然隊長……元隊長が来てそんなこと言われて、俺も困ってたんだよ」
「やはり急だったんだな」
「元隊長も良かれと思ってるだろうけど、でも心の準備だってあるしね」
「お前もそう思っていると聞いて安心した。俺は#name1#と話してくる」
「えっ?なんで#name1#……?って、行っちゃった…」
嵐のように現れた元上司に娘の、それも現上司にあたる#name1#の見合い話などを聞かされたせいだろう、アルの顔には疲れが浮かんでいた。自分も初めこそモヤモヤして焦りもあったが、こうも味方がいるのであれば何も迷うことはない。得意げに笑って大丈夫だと伝え、当人である#name1#の元へ向かった。
思い返せばこれまで#name1#の浮いた話をあまり聞いたことがない。部下が彼女の話をしていたり、恋人がいるのかと尋ねられたこともあったが、その後良い関係に発展したというのは聞かない。
仲が良い幼馴染でも所詮は男と女。そんな話をする機会があるわけもなく、セシルとだって(色々な意図があるせいで)互いに踏み込んだことは言わない。
だから急に何処の馬の骨とも知れない男が#name1#の相手になるなど、受け入れられるはずがないのだ。
#name1#はすぐに見つかった。手にした書類を受理するために城の中央部まで来ていたようだ。こちらを見るや、頬を緩めて笑っている。よくそんな暢気な顔をしていられる。思わず顰めた眉間は、竜の兜に覆われて#name1#が気付くことはない。
「カイン、久しぶりだね!」
顔を合わせるのは遠征に行くより前だったから10日と少し空いたところだ。そうだな、と相槌を打って改めて#name1#の顔を見る。随分と疲弊していたアルに比べて彼女は何もなかったかのように軽い足取りで駆け寄ってくる。
「遠征はどうだった?実はわたしたちも今度ね、」
「#name1#、話がある」
「え?何?」
首を傾げて疑問符を浮かべる#name1#に一度息を吸い込んで努めて冷静に口を開いた。見合いの話だが、と言いかけたところで心当たりがあったらしくこくりと頷く。知っていたのか、ならば話が早い。
「あれ?カインも聞いたの?そうなのよ、お父さんが急に言い出してね」
「あぁ。だが、まだ早いんじゃ…」
「そろそろしてみてもいいんじゃないかなってわたしも思っていたの」
「…なんだって?」
想像もしていなかった#name1#の返答に一瞬目眩がした。聞き間違い、とは思えないほど#name1#は笑顔で話していて頭を槌で殴られたような感覚に陥る。
「お相手の方もとても素敵な人だと思うし、まずは会ってみないとわからないでしょ?それにお城勤めって出会いがないわけじゃないはずだけど…魔道士って、この国ではあんまり人気もないし、ね」
「……お前がそうしたいなら、無理には止めないが……」
「…カイン?どうしたの?」
「だが結婚だぞ?もう少しよく考えてみてもいいんじゃないか?」
「わたしが考えるの?」
「当たり前だろう!何を他人事のように……」
良い加減我慢ならなかったので小さな肩を掴んで声を大にする。生涯を共にする相手を、それもミシディアに嫁ぐのならば黒魔道士団を抜けてまでも寄り添い続ける相手をそんな簡単に決めて良いわけがない。何もわかっていない#name1#にどこから説けばよいのか、相変わらず目をぱちくりと瞬かせる顔に不安を覚えたところで、後ろから知った気配と笑い声が聞こえてきた。
「ふふふっあはははは!」
「…あれ?セシルにローザ!」
「セシルったら、そんなに笑ったら悪いわよ!ふふふふ…」
「きみこそ!」
何が可笑しいのか、半ばお腹を抱えて笑い転げてしまいそうな2人は涙の浮かぶ目元を押さえて近付いてくる。お前たちも#name1#を説得してくれ、と思うが今の2人の様子の方がどう考えても変だ。
「なに?何がそんなに面白いの?」
「カインさ!お見合いは無事に阻止できた?」
槍玉に上げられてぴくりと眉が動いた。今からそうしようというのに、とんだ邪魔をしてくれたものだ。ひとまず一度冷静になって話を改めようと#name1#の肩から手を離した。
「今からそれを…」
「阻止って…、カイン、お見合いを止めたかったの…?」
「あぁ、だいたい俺たちに相談もなく、」
「そんなにアルに結婚してほしくなかった?」
先ほどの笑顔と一転して不安を浮かべる#name1#。また後ろから笑いを堪えきれなかったセシルが吹き出した音が聞こえたが、もはやそれはどうでもいい。今、なんと言ったか。アルの名が出てきたと思うが、なぜなのか。混乱する脳内ではいっそアルと#name1#が結婚してしまいそうだ。
「……#name1#、見合いをするのは誰だ?」
「アルとミシディアの白魔道士の子よ」
「……」
全てが繋がった。#name2#氏は、元部下であるアルをミシディアで紹介していたというわけか。確かに2人は#name1#の、とは一言も言わなかったが。
「…セシル、お前は知っていたな?」
「ごめんごめん、お前があまりにも必死だったからつい…で、でも僕も#name1#のお見合いとは言ってないよ!」
「いいや、言ったも同然だ!」
****
「こんにちはー竜騎士団のみなさん!」
数日後、#name1#はアルを連れて大荷物を抱えてやってきた。2人掛かりでなんとか持てる山のようなアイテムはほとんど#name1#が手配してくれたもの。受け取った団員がその重さに目を丸くしていた。
「頼まれてたアイテム持ってきたよ。これで足りそう?」
「あぁ、十分だ。ありがとう、助かった」
「これくらいお安い御用よ」
これから黒魔道士団は遠征に出るらしく渡すだけ渡して立ち去る#name1#たちに気をつけろよ、と声をかける。先を行く#name1#の後ろでアルが振り返り遠慮がちにこちらへ近付いて来た。
「そうだ、カイン。…お見合いのことなんだけどさ、やっぱり俺は断ったよ」
「…そうか」
「カインには伝えてあげてって#name1#に言われたんだけど…これでよかった?」
「#name1#…!あぁ、いや、すまん。お前は悪くない。残念だったな」